2012年5月19日土曜日

『草原』23-10(通巻106)号より


会話のない親子で牛丼  滋人 
 私と父も、ほとんど会話のない親子です。口を開いたとしても、もっぱらお金の話で、雑談はまずもってしません。しかしそういう親子として、生まれてこの方過ごしてきている以上、特に不自由もないのです。

古布一気に裂いて人形の着物  渓子
 布を裂く音が聞こえてくるような句です。こうした再利用の感覚は、私たちの世代では薄れてきているように感じます。なんとしても、後代に残したい知恵です。

聞きとれず聞き流せば私への質問  昭代
 私の祖父も、最近耳が遠くなってきました。先のお盆に帰省した折、祖父とふたりでテレビを見ておりましたが、私の言っていることはほとんど祖父の耳には届かないようで、会話らしい会話はできませんでした。しかし、それはそれで楽しい時間でした。

拡大文字の句が胸をはみだす  昭代
 拡大鏡か何かで、句を読んでいらっしゃったのですね。よほど感動的な句だったのでしょう。好きな句です。

膝の痛み強く雨の法事  操子
 痛みと雨と法事と、憂鬱なことが重なる日でしたね。

短いスカートの短い脚のそそくさ  ゆ
 農耕民族であったがゆえでしょうか、胴長短足は東洋人の必然です。その分和服が似合うので、私は自身の体型を誇ります。

花に埋もれた耳にも届け惜別の辞  かいじ
 「届け」という言葉に、詠み手の想いを感じ取りました。きっと届いたものと、強く信じます。

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